\documentclass{article} \usepackage[utf8]{inputenc} \usepackage[dvipdfmx]{graphicx} \usepackage{amsthm,amsmath,amssymb,mathrsfs,mathtools,float} \newtheorem{definition}{Definition}[section] \newtheorem{theorem}[definition]{Theorem} \newtheorem{lemma}[definition]{Lemma} \newtheorem{example}[definition]{Example} \newtheorem{proposition}[definition]{Proposition} \newtheorem{algorithm}[definition]{確率的なプログラム} \newtheorem{algorithm*}{確率的なプログラム} \newtheorem{question}[definition]{Question} \newcommand{\abs}[1]{\left\lvert#1\right\rvert} \newcommand{\C}{\mathbb{C}} \newcommand{\R}{\mathbb{R}} \newcommand{\Z}{\mathbb{Z}} \newcommand{\N}{\mathbb{N}} \newcommand{\Q}{\mathbb{Q}} \newcommand{\F}{\mathcal{F}} \newcommand{\M}[1]{\mathcal{M}_{#1}} \title{縮小複素アフィン変換と最小安定閉集合} \author{hora-algebra} \date{\today} \begin{document} \maketitle \section{導入} この文章は,以下のような画像に関する数学的背景とプログラムについて記述する. \begin{figure}[ht] \centering \includegraphics[width=12cm]{images/Sample1.JPG} \end{figure} % \begin{figure}[ht] % \includegraphics[width=2cm]{images/Sample2.png} % \end{figure} % \begin{figure}[ht] % \includegraphics[width=2cm]{images/Sample3.png} % \end{figure} % \begin{figure}[ht] % \centering % \includegraphics[width=5cm]{images/Sierpinski.jpg} % \end{figure} \subsection{ネタバレ} \subsection{言い訳} % \tableofcontents \section{数学的背景} 特に数学的に深淵な構造があると主張するわけではないが,幾何学的な定義とそれを支える基本的な性質に言及しておく. ネタバレをしてしまうと,複素平面の中で「縮小複素アフィン変換」の族に対して特別な性質を満たす「安定閉集合」 \subsection{用語の定義} この文章での縮小アフィン変換という用語を次のように定義する. \begin{definition}[縮小複素アフィン変換] 複素数$a,b\in \C$を用いて$f(z)=az+b$と表示される関数$f\colon \C \to \C$を$1$次元 複素アフィン変換という.今後は単に複素アフィン変換という.複素アフィン変換は$\abs{a}<1$のとき縮小複素アフィン変換と呼ぶ. \end{definition} \begin{definition}[変換システム] 縮小複素アフィン変換からなる空でない有限集合を変換システムという. \end{definition} 変換システムの例を挙げておく \begin{example}\label{CantorSystem} $\{z/3, z/3 + 2/3\}$は変換システムである.なぜなら,$1/3$の絶対値は$1$未満だからである. \end{example} 変換システムが与えられるたびに,「最小安定閉集合」という$\C$の部分集合を対応させることを考える.$\C$の部分集合は,複素平面の考え方を通して平面図形だと捉えられる. \begin{definition}[安定集合] 変換システム$\F$の安定集合とは,$S\subset \C$であって,任意の$f\in \F$について \[f(S)\subset S\] なるものをいう.安定集合であって,かつ(位相的に)閉集合でもあるものを安定閉集合と呼ぶ. \end{definition} \begin{example} Example \ref{CantorSystem} の変換システム$\{z/3, z/3 + 2/3\}$の安定集合を考えてみる.空集合や$\C$全体は(変換システムが何であっても)安定閉集合である.他にも,$\R \subset \C$やそれより小さい$[0,1]$やカントール集合は安定閉集合である.安定だが閉集合でない部分集合としては$\Q\subset \C$が挙げられる.$\Z$は(閉集合だが)安定ではない. \end{example} 安定な軌道の中でなぜ閉集合に注目するかというと,(空でない中で)最小のものが存在するからである.つまり,変換システムに対しある種canonicalな(そして非自明な)安定閉集合を考えられるからである.最小のものの存在は次のsubsectionに回すとして,定義だけしてしまう. \begin{definition}[最小安定閉集合] 変換システム$\F$の最小安定閉集合とは,空でない安定閉集合の中で(包含に関して)最小のものをいう.変換システム$\F$の最小安定閉集合を$\M{\F}$とかく. \end{definition} \subsection{最小安定閉集合の存在} 最小安定閉集合が存在することを証明する.(一意性は定義から簡単にわかる) いくつかlemmaを準備する. \begin{lemma}[安定閉集合の生成]\label{genSCS} 変換システム$\F$と任意の$S\subset \C$について,$S$を含む最小の安定閉集合が存在する. \end{lemma} \begin{proof} まず,与えられた$S$に対して,$S$の元に$\F$の元を有限回(好きな順番に好きな回数)作用させて得られる元の集合$S'$を考える.記号的に書けば \[ S' \coloneqq \{f_n \circ \dots \circ f_1 (s)\mid s\in S, n\in \N, (f_1,\dots f_n)\in \F^{n}\} \]である.ここで曖昧さを排除しておくと,$\F$の元の$0(\in \N)$回の作用の結果として$S\subset S'$となっている.簡単な議論により,$S'$が$S$を含む最小の安定集合であることがわかる. $S'$の位相的な閉包$\overline{S'}$が$S$を含む最小の安定閉集合であることを示す. 示すべきことは$2$つである. \begin{enumerate} \item $\overline{S'}$が$S$を含む安定閉集合であること. \item $\overline{S'}$が$S$を含むどんな安定閉集合にも含まれていること(最小性). \end{enumerate} である. まず,前者を示す.$S$を含む閉集合であることは簡単であるから,安定集合であることを示せばよい.$f\in \F$を任意に取る.$S'$は安定だから$f(S')\subset S'$であり,両辺の閉包を取ると$\overline{f(S')}\subset \overline{S'}$となる.$f$の連続性から$f(\overline{S'})\subset\overline{f(S')}$なので合わせて$f(\overline{S'})\subset\overline{S'}$を得た.これで$\overline{S'}$は(変換システム$\F$について)安定集合であることがわかった. 次に,後者を示す.$T$が$S$を含む安定閉集合だとする.このとき$S'$は$S$を含む最小の安定集合なので$S'\subset T$である.さらに$\overline{S'}$は$S'$を含む最小の閉集合なので$\overline{S'}\subset T$である. これで$\overline{S'}$が$S$を含む最小の安定閉集合であることが示された. \end{proof} $S\subset \C$に対して,$S$を含む最小の安定閉集合を$\hat{S}$と書くことにする.上のlemmaは$\hat{S}$の存在を保証している. \begin{lemma}[縮小複素アフィン変換の不動点]\label{fixedPoint} 縮小複素アフィン変換$f(z)=az+b$ ($\abs{a}<1$)は不動点をちょうど$1$つもつ. \end{lemma} \begin{proof} \[z=az+b \iff z= \frac{b}{1-a}\] から. \end{proof} \begin{proposition}[最小安定閉集合の正体] 変換システム$\F$について,$\F$の元の不動点の集合を$P$とすると,$\hat{P}$が最小安定閉集合である. 特に,変換システムに対して最小安定閉集合は存在する.(一意性も,最小性からわかる.) \end{proposition} \begin{proof} $\F$は空でないことを課しているので$P$も空でなく,$\hat{P}$も空でない.ゆえに,$\hat{P}$は空でない安定閉集合である. 任意に空でない安定閉集合$T$をとる.$\hat{P}\subset T$を示す.そのためには,$\hat{P}$の定義から$P\subset T$を示せば十分である.$f\in \F$を任意にとり,$p\in \C$をその不動点とする. % $f(z)=az+b$なる$a,b \in \C$について, % \[(f(z)-p)=a(z-p)\] % となることが簡単な計算でわかる.つまり,$f$は点 $T$は空でないので元$t\in T$を取れる.このとき, \[\lim_{n\to \infty}f^{n}(t)=p\] である.(実際,$f(z)=az+b$なら,$f$を一回作用させるたびに$p$との距離が$\abs{a}<1$倍になる.) よって,$T$が閉なことから$p\in T$である. 以上で$\hat{P}$が最小安定閉集合であることがわかった. \end{proof} カントール集合やシェルピンスキーのギャスケットが安定閉集合の例になっていることを見る.これらははある種の自己相似性を持っており,それによって適切な変換システムに対して安定集合になっている.以下の具体例は,逆にその変換システムに対して普遍的な図形としてカントール集合やシェルピンスキーのギャスケットを復元できることを意味している. \begin{example}[カントール集合] Example \ref{CantorSystem}で挙げられた変換システム$\F=\{z/3, z/3 + 2/3\}$の最小安定閉集合を考える.不動点の集合は$P=\{0,1\}$である.Lemma \ref{genSCS}の証明の通りに$\hat{P}=\M{\F}$を計算すると,カントール集合が出てくる. \end{example} \begin{example}[シェルピンスキーのギャスケット] 変換システム \[\F = \{\frac{z+1}{2}, \frac{z+\omega}{2}, \frac{z+\omega^2}{2}\}\] の最小安定閉集合$\M{\F}$はシェルピンスキーのギャスケットである. \end{example} % \begin{figure}[H] % \centering % \includegraphics[width=12cm]{images/Sierpinski.jpg} % \end{figure} \subsection{最小安定閉集合の性質} この説では最小安定閉集合の有界性と(ある種の)自己相似性を示す. まずは有界性を示す.(数学科の人への一言として,$\M{\F}$が$\C$の閉集合であることから,位相の言葉で言えばコンパクト性がわかる.) \begin{proposition}[有界性] 任意の変換システム$\F$について,その最小安定閉集合$\M{\F}$は有界集合である. \end{proposition} \begin{proof} 非負実数$r\geq 0$に対して, \[ D_{r} \coloneqq \{z\in \C\mid \abs{z}\leq r\} \] と定める.任意の変換システム$\F$について,($\F$に依存して)十分大きく$r>0$を取れば,$D_{r}$は$\F$の安定閉集合になる.(縮小アフィン変換$f(z)=az+b$の作用で$D_{r}$が閉じていることの必要十分条件は \[\frac{\abs{b}}{1-\abs{a}} \leq r\] であることを用いるとわかる.) 従って,$\M{\F}$の最小性より$\M{\F}\subset D_{r}$がわかる.これで$\M{\F}$の有界性は示された. \end{proof} $\M{\F}$が自己相似性を持つことはここでは以下のように述べておく. \begin{proposition}[自己相似性] 任意の変換システム$\F$について, \[\M{\F}=\bigcup_{f\in \F}f(\M{\F})\] が成立する. \end{proposition} \begin{proof} $\M{\F}\supset\bigcup_{f\in \F}f(\M{\F})$という包含は,$\M{\F}$が安定集合であることからわかる.逆向きの包含$\M{\F}\subset\bigcup_{f\in \F}f(\M{\F})$を示すためには,$\M{\F}$の最小性より右辺$\bigcup_{f\in \F}f(\M{\F})$が空でない安定閉集合であることをみれば十分である. 空でないことは$\M{\F}$が空でないことから写像によるその像$f(\M{\F})$も空でないことからわかる.(厳密には$\F$が空でないという仮定も使っている.) 閉集合の縮小アフィン変換による像は再び閉集合であり,閉集合の有限和は閉集合なので,右辺が閉であることもわかる.$\F$についての安定集合であることは,既に示した包含関係$\M{\F}\supset\bigcup_{f\in \F}f(\M{\F})$ (言い換えれば$\M{F}$の安定性そのもの)を使えば容易に確かめられる. \end{proof} 上のpropositionのどこが自己相似性なのか,少し言及しておく.集合$S\subset \C$を縮小アフィン変換$f$で送った像$f(S)$は$S$を真に縮小させた後,回転と平行移動をして得られる図形であり,いわば$S$の「縮小コピー」である.上のpropositionは,$\M{\F}$は自身の「縮小コピー」を有限個集めたものとして書けることを主張している.この意味で自己相似性と言っている. \section{数学的な展開の可能性} 考えてみたいが,まだこの文章に書けるほどには考えていないテーマを列挙しておく. \subsection{一般化} この文章では$\C$と複素アフィン写像を考えたが,これは議論を展開するには一般的すぎる.一般の位相空間$X$とその自己連続写像の有限集合$\F$について\footnote{もしくはそれらより広いクラスについて}同様の議論がどの程度展開できるかを考える. 例えば,一般の位相空間では lemma \ref{genSCS} は同様に成立するが,lemma \ref{fixedPoint} は成立しない. \subsection{濃淡の定式化} \subsection{面積公式} ルベーグ測度予想...面積公式を与えよ! \section{確率的アルゴリズム} $\F$が与えられたときに$\M{\F}$を「近似的に」記述するアルゴリズムを説明する.画面に$\C$のsubsetを表示する上で,何をもって「近似的」になっているかを厳密に定式化することは可能だが,そのことを書く必要性が生まれるまでは面倒なので書かないことにする. \begin{enumerate} \item 事前に,二つの自然数パラメータ$n,m$を決めておく.(大きいほど近似の精度は良い.) \item 入力として$\F$を受け取る. \item 以下の手続きを$n$回繰り返す. \item $\F$の元$f$をランダムに選び,その不動点を点$p$とする. \item 以下を$m$回繰り返す. \item 点$p$をプロットする. \item $\F$の元$f$をランダムに選び,$p$を$f(p)$に置き換える. \end{enumerate} \end{document}